FXで為替差益とともに期待できる利益として、スワップポイントが挙げられます。特に金利水準の高い新興国通貨などは、スワップポイントの高さが投資家の間で人気を呼んでいる様です。
スワップポイントとはどういったものか、そのメリットや注意点は何かについて説明します。
FXのスワップポイントとは?
外貨預金における金利(預入利息)のようなイメージで捉えられがちですが、スワップポイントはFXだからこそ期待できる利益で、発生する仕組みも大きく異なります。まずは基本的なことから解説を始めましょう。
FXのスワップポイントについて
FXでは、日本などの超低金利国の通貨を売り、トルコやメキシコ、南アフリカなどの新興国などの高金利国の通貨を買うと、ポジションを決済するまで毎日スワップポイントと呼ばれる利益を得ることができます。
スワップポイントは「金利差調整金」とも呼ばれ、2国間の金利差によって発生する利益です。
(※逆に、金利の低い国の通貨を買って、金利の高い国の通貨を売ると、金利差分のスワップポイントが支払われます)
例えば、FXで日本円を売って、高金利通貨であるメキシコペソを買った場合を考えてみましょう。
日本の政策金利が0.1%程度であるのに対し、メキシコは7.25%(2020年1月現在)です。
実際に日米間には7%以上の金利差があり、ポジションを建てる(保有する)限りスワップポイントを受け取ることができます。ただし、実際のスワップポイントは政策金利の差とぴったり一致するわけではなく、FX会社によって数値に差があります。
仮にスワップポイントに変動がなく、日本円を売ってメキシコペソを買うポジション(建玉)を1年間保有した場合、そのポジションだけで36,500円(100円×365日)受け取れることになります。
しかし、レバレッジ1倍で10万通貨のポジションを建てるには、1メキシコペソあたり約6円で計算すると約60万円(6円×10万)の必要証拠金が必要となる。
これに対し、レバレッジ3倍では約20万円、レバレッジ5倍では約12万円、レバレッジ10倍では約6万円弱の証拠金で同じ利益を得ることができるのです。つまり、レバレッジをかけることで、より効率的にスワップポイントを獲得することができるのです。みんなのFX」の場合、レバレッジは25倍固定なので、建てるポジション数を控えめにすることで、実質的なレバレッジを下げることができます。
FXに関しては、「デイトレードなど超短期売買で為替差益を狙う」というようなイメージがあるのではないでしょうか?しかし実際には、スワップポイント狙いで中長期的に投資する投資家も少なくありません。もちろん、米ドル/円や豪ドル/円など、身近な通貨ペアでもスワップを受け取ることができます。
スワップポイントのメリット
スワップポイントのメリットは、ポジションを決済しない限り毎日利益を得ることができることです。株式投資で得られる利益は、時価が購入価格より上昇した時点で売却しなければ得られませんし、配当金も半年ごと、もしくは1年ごとにしか支払われません。
しかし、FXのスワップポイントは売買の必要がなく、取引口座に継続的に蓄積されます。かつて人気を博した毎月分配型の投資信託よりも、より頻繁に利益を受け取ることができるのです。
通貨ペアやFX会社によってスワップポイントが異なる理由
スワップポイントは、ポジションを翌日以降に持ち越した場合、1日分付与されます。一方、オーバーナイトせずにデイトレードでポジションを決済した場合(翌日にポジションを持ち越す)、スワップポイントは付与されません。
翌日以降にポジションを持ち越せるかどうかの判断基準は、ニューヨーク市場が閉まる日本時間午前6時50分(サマータイム期間中は午前5時50分)です。外国為替取引では、市場終了の2営業日後に通貨の受渡しや決済が行われますが、FX会社によっては、スワップポイントが実際に口座残高に反映されるまでにタイムラグがある場合があります。
スワップポイントは、政策金利の変動がない限り常に一定ではなく、日々変動します。スワップポイントは、発行国の短期金利市場に基づく2国間の金利差をもとに算出されますが、為替レートや市場変動の影響も受けます。
通貨ペアによってスワップポイントの水準が大きく異なるのは、金利の違いによるものです。また、同じ通貨ペアでもFX会社によって差がありますが、これはFX会社の方針の違いによるところが大きいです。
スワップポイントが高い通貨ペアにはどのようなものがあるのでしょうか。
主要国の政策金利を見渡すと、南アフリカ、メキシコ、トルコなどの新興国が特に高い。南アフリカは6.25%、メキシコは7.25%、トルコは11.25%に達しています(2020年1月現在)。
現在、大手銀行の定期預金金利は約0.01%(2020年1月現在)、10万円預けても1年後に得られる利息はわずか10円です。元本保証の商品と比較するのは野暮かもしれませんが、高金利通貨のスワップポイントが魅力的であることは間違いありません。
スワップポイントに関する注意点
しかし、魅力的なスワップポイントには、いくつかの注意点があります。それらを意識しておかないと、
スワップポイントを得るどころか、損をしてしまう可能性があります。
スワップポイントは、場合によってはマイナスになることもある
スワップポイントの注意点としては、「高金利通貨を売って低金利通貨を買う」というパターンの場合、スワップポイントがマイナスになることです。その場合、投資家は金利差分のスワップポイントを支払わなければならなくなります。
先ほどの南アフリカランド/円、メキシコペソ/円、トルコリラ/円などの新興国通貨ペアを売ると、逆に高水準のスワップポイントを負担しなければならなくなるのです。
おそらく、相場の下落を見越してこれらの通貨ペアの売却を検討しているのでしょうが、スワップポイントがマイナスになるリスクを念頭に置くと、短期戦略に徹する方が無難かもしれません。
また、目の前の金利が高くても、各国の経済状況や金融政策によって、金利差が縮小したり、スワップポイントが減少したりするリスクもあります。なによりも、高金利通貨の為替レートは変動しやすいということを念頭に置いておくことが大切です。
特にレバレッジを高くかけている場合、為替差損が発生すると証拠金が目減りし、最終的にロスカットになる危険性があります。その場合、受け取ったスワップポイントを上回る損失が発生する可能性があります。
スワップポイントは付与された時点で課税対象となります。
金融商品の運用で得た所得は、非課税枠を除き、課税対象となります。スワップポイントも20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)の税率で課税されます。
ただし、FXのスワップポイントにかかる税金は、取引が法人口座か個人口座かによって扱いが異なるので注意が必要です。法人口座の場合、スワップポイントは付与された時点で課税の対象となります。
これに対し、個人口座の場合は、付与時ではなく、受取時に課税対象となります。
スワップポイント運用のコツ
このコーナーでは、スワップポイントを中心としたFXの運用のコツをまとめました。以下の3点を押さえておけば、より堅実にスワップポイント狙いの運用を実践できるはずです。
スプレッドが狭い通貨ペアを選ぶ
高いスワップポイントが期待できても、スプレッドが広ければ広いほど、取引コストは重くなります。また、為替レートの変動がない場合でも、スプレッドによって為替差損が発生し、スワップポイントが減少してしまいます。
取引を始める前に、売値(通貨を売るときに適用される為替レート)と買値(通貨を買うときに適用される為替レート)の差であるスプレッドを確認するのが賢明でしょう。その上で、スプレッドが狭く、スワップポイントが比較的高い通貨ペアを選択することが望ましいでしょう。
投資する通貨ペアを分散させる
せっかくスワップポイントを獲得しても、獲得したスワップポイントよりも大きな為替差損が発生してしまっては元も子もありません。このリスクを減らすためには、複数の通貨に分散して投資することが賢明です。
また、為替差損だけでなく、政策金利の変動により、スワップポイントが減少する可能性もあります。こうしたリスクにも分散投資は有効で、ある通貨ペアの利益が減少しても、他の通貨ペアの利益でカバーすることが期待できます。
必要な証拠金をこまめに確認する
損失により口座残高が必要証拠金を下回った場合、ロスカット(強制決済)が実行され、ポジションが解消され、受け取ったスワップポイントを超える損失が発生する可能性があります。このような事態を避けるため、常に口座残高と必要証拠金の額を確認してください。
リーマンショックなど過去の為替市場の暴落を踏まえ、一般的に証拠金維持率は最低でも250%、できれば300%以上を維持することが安全とされています。スワップポイント目的の中長期投資を行う場合は、なるべく証拠金維持率を高く保つようにするのが安全と考えられます。
スワップポイント狙いのトレードは守りの姿勢が肝心
外国為替市場の機会を捉えて為替差益を得る取引を「狩猟」に例えるなら、その成果を着実に収穫するスワップポイント狙いの運用は「農耕」と言えるでしょう。ただし、前述したように、リスクはそれほど大きくはない。しかし、上記のようにリスクがある以上、収穫を台無しにしないためのリスクヘッジや証拠金管理は重要です。