通貨ペアって何?
通貨ペアの基礎知識
外国為替(FX)取引における通貨ペアとは、2つの通貨を組み合わせたものです。各国の通貨を売買(交換)することで利益や損失を出すFX取引では、どの通貨ペアを取引するかが非常に重要なポイントになります。
基準通貨と決済通貨について
FX取引において、様々な通貨ペアを表現するための簡単なルールがあります。取引の基準通貨として位置づけられている通貨(基準通貨)を左側に、決済に使われる通貨(決済通貨)を右側に表記します。USD/JPY」の場合、「1米ドルにつき何円交換できるか」という意味です。
クロス円とストレートドル
FX取引をする上で覚えておきたいのが、「クロス円」と「ドルストレート」という言葉です。前述の通貨ペアで取引する場合、米ドル以外の通貨と日本円の組み合わせを「クロス円」、米ドルと他の通貨の組み合わせを「ドルストレート」と呼びます。また、「ユーロ/ポンド」のように、米ドルも日本円も含まない組み合わせは「クロス通貨(複合通貨)」と呼ばれます。
初心者の方は、この「クロス円」と「ドルストレート」が自分の取引にどう影響するのか気になるところではないでしょうか。「ドルストレート」は簡単で、米ドルと直接対になっている通貨を取引することです。例えば、米ドルと日本円、米ドルとユーロなどです。
「クロス円」は、基準通貨と日本円を米ドルを介して取引します。例えば、「豪ドル/円」の組み合わせでは、日本円で米ドルを買い、その米ドルで豪ドルを買うというように、米ドルを経由して取引を行います。
なぜ米ドルを介した取引なのでしょうか?この疑問については、次の章で明らかにします。
メジャー通貨とマイナー通貨
なぜ「クロス円」取引は米ドルを介して行われるのでしょうか。簡単に言えば、米ドルは世界経済の基軸通貨だからです。かつては英ポンドが基軸通貨として認識されていたが、米国経済の成長などにより、その地位は米ドルに移り、現在では世界の金融取引に広く利用されています。
また、FXの世界では、「メジャー通貨」「マイナー通貨」といった表現があります。明確な定義はありませんが、FX市場で取引量が多く、取引参加者が多い通貨を「メジャー通貨」、取引量が少ない通貨を「マイナー通貨」と言ってもよいでしょう。
一般に主要通貨とは、先ほど「世界の基軸通貨」として紹介した米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、豪ドル、スイスフラン、ニュージーランドドル、カナダドルのことを指します。金融の世界では、主要通貨は「G10(Group of Ten)通貨」とも呼ばれ、経済ニュースなどで目にした方も多いのではないでしょうか。
FX初心者のための通貨ペアと、正しいペアの選び方とは?
FX取引で利益を得るには、大きく分けて2つの方法があります。1つ目は、為替相場の変動によるキャピタルゲイン。もう1つは、通貨ペアを保有することで得られるスワップ益(インカムゲイン)です。
一般的な利益のイメージ通り、キャピタルゲインは「為替レートが安い時に買い、高い時に売る」ことで得られますが、FXの大きな特徴として「買い」ではなく「売り」から取引を開始できることが挙げられます。
例えば、A通貨の金利が5%、B通貨の金利が1%の場合、金利差4%がスワップポイントになります。為替レートの変動に関係なく、金利の高い通貨を買う(保有する)ことで、預金の利息と同じように、ほぼ毎日スワップ収入(インカムゲイン)を得ることができるのです。
FX取引のプロフィットポイントを踏まえて、「どの取引方法が自分に合っているのか」ということが、取引を始める際の通貨ペアの選び方のヒントになると思います。
▼その1 :取引量の多い通貨ペアを選びましょう
取引量の多い通貨ペアは流動性が高いので、相場が急に動くことが少なく、また、トレンドを反映した値動きをすることが比較的多いので、安心して取引を始めることができます。また、取引する人が多いので、テクニカル分析に役立つ情報が多いだけでなく、経済指標や要人発言、紛争などの地政学的内容など、ファンダメンタル分析に関わる情報も入手しやすくなっています。
▼その2 :スプレッドの狭い(小さい)通貨ペアを選びましょう
FX取引では、通貨ペアを買ったり売ったりする際に価格差が発生します。通貨ペアを売るときにつける価格を「Bid」、買うときにつける価格を「Ask」といい、その差を「スプレッド」といいます。スプレッドの単位は「ピップ」です。日本円を含む通貨ペアでは主に「銭」が使われ、1pips=1銭(0.01円)と定義されます。その他の通貨ペアでは、一般的に0.0001=1ポイントと表記され、1pips=1ポイントと定義されます。このように、「pips」は一般的な値幅を指す単位として使用されています。
▼その3 :ボラティリティが適度な通貨ペアを選びましょう
ボラティリティとは、価格の変動率、つまり値動きがあるかないかを表す言葉です。FXトレーダーは為替差益で儲けようとするため、ボラティリティが低く値動きが小さいと儲けにくくなります。逆に、通貨ペアの価格が乱高下すると、利益を出すだけでなく、損をするリスクも高まります。
取引量が多く、スプレッドが狭い。取引量が多く、スプレッドが狭くても、変動幅が適度な通貨を選びましょう。また、為替差益(キャピタルゲイン)で損切りしながら「損小利大」を目指すのか、スワップ収入(インカムゲイン)で着実に利益を積み上げるのか、自分の投資スタイルに合った通貨ペアを選ぶとよいでしょう。
自分の投資スタイルに合った通貨ペアを見つけることは、FX取引の醍醐味であり、楽しみの一つです。
そこで今回は、自分の投資スタイルに合った通貨ペアを選ぶために、「取引量が多い3つの通貨ペア」と「積み立てに適した高金利通貨ペア3つ」を紹介します。
FX市場で最も取引量の多い3つの通貨ペア
世界の基軸通貨である米ドルと、第二の基軸通貨であるユーロ
前述の3択通貨ペアでも話題になった取引量の多さは、G10通貨に集中しています。金融先物取引業協会が発表している通貨ペア別売買代金では、「米ドル/円」がダントツで高い売買代金を記録しています。
また、欧州単一通貨として使用されているユーロの人気も高く、第二の基軸通貨としての側面も伺える。ここでは、FX市場で取引量の多い3つの通貨ペアの特徴を説明しますので、通貨ペアを選ぶ際の参考にしてください。
▼ 米ドル/円
米ドルは、国際的な金融取引の決済に広く利用されています。USD/JPY」は、取引量・流動性が高く、マーケットスプレッドも狭いのが特徴です。値動きが比較的安定しているため、FX初心者の投資家には最適な通貨ペアの一つです。また、為替市場に影響を与えるFOMC(連邦公開市場委員会=米国の金融政策決定会合)や米雇用統計(雇用情勢の調査で極めて重要な経済指標)後の情報を入手しやすいことも魅力の一つです。
▼ ユーロ/円
ユーロは、1993年に設立された欧州連合(EU)の下で作られた単一の共通通貨です。ユーロは米ドルに次いで世界で2番目に取引されている通貨であり、第2の基軸通貨と呼ぶことができる。また、ユーロ/円は流動性が高く、スプレッドが狭いため、米ドル/円以外の通貨ペアを試したい投資家からも注目されています。ユーロ相場は欧州諸国の影響を受けるため、材料が豊富で取引機会も多いと言えます。
▼ “ユーロ/米ドル”
世界で最も取引されている通貨の組み合わせは、ユーロと米ドルです。ユーロ/米ドルはいわば世界の基軸通貨ペアであり、その取引量は群を抜いている。ユーロ/米ドルの特徴として、一度出たトレンドは持続する傾向があることが挙げられます。例えば、一度上昇し始めたら大きな買いが入らず、そのまま上昇を続けることも珍しくありません。また、アジア時間帯は緩やかな値動きで、欧州時間帯に活発化するケースも少なくありません。
高金利で人気の通貨ペア3選
インカムゲインが期待できる高金利通貨ペアの魅力と特徴
▼高金利通貨ペアの魅力と特徴
FXでは、日本などの超低金利国の通貨を売り、高金利国の通貨を買うことで、ポジションを閉じるまでほぼ毎日「スワップ益(インカムゲイン)」と呼ばれる利益を得ることができます。このスワップ益は非常に魅力的ですが、高金利で知られる新興国通貨は値動きが荒いので、資金やポジション管理には注意が必要です。ここでは、高金利通貨として認知され、日本でも人気のある3つの通貨ペアを紹介します。
▼ “南アフリカランド/円”
アフリカ大陸の最南端に位置する南アフリカ共和国(以下、南アフリカ)は、同大陸最大の経済大国として発展してきました。世界最大の金埋蔵量を誇り、ダイヤモンドやプラチナなど豊富な鉱物資源を有する資源国として知られています。また、南アフリカは長期的に人口と若年層の増加が見込まれており、労働市場や消費における需給の拡大により、今後もアフリカ地域の経済成長をリードしていくことが期待されています。南アフリカで使用されているランドは、高い政策金利が魅力です。また、日本の投資家にも人気があり、資源価格の動きと相関があることが特徴です。一方で、電力問題に代表される南アフリカの国内情勢が不安定であることなど、リスク要因を考慮した上で取引することが必要です。
▼ “トルコリラ/円”
トルコ共和国は、ヨーロッパとアジアにまたがるイスラム教の大国で、世界で最も親日的な国の一つです。カッパドキアやトロイアの遺跡など多くの世界遺産を有し、観光業は国の重要な収入源となっています。経済成長率も新興国の中では高く、最近では黒海に最大級の天然ガス田を発見し、2023年の生産開始に向けて減税措置を実施するなど、エネルギー資源の活用に期待が寄せられています。トルコリラは古くから高金利通貨の代表格であり、その高いスワップ収益が今も根強い人気を誇っている。また、トルコリラは良くも悪くもエルドアン大統領の影響を受けやすく、彼の言動や国内外に対するスタンスによって相場が変動することが多い。その圧倒的なリーダーシップから、政治的・地政学的リスクが高まった際には、投資家は特に大統領の発言に注意する必要があります。
▼ “メキシコペソ/円”
メキシコは北米大陸の南部に位置し、中南米を代表する新興国である。メキシコの人口と名目GDPは、中南米ではブラジルに次いで2位であり、オーストラリアやスペインと同規模の経済規模を誇っています。また、石油や天然ガスなどの天然資源が豊富で、ペソは資源国通貨でもある。近年、日本でもペソは高金利、スワップ益、低リスク取引ということで取引量が急増し、人気を博している。トランプ政権時には米墨関係の悪化が懸念されましたが、バイデン政権で両国の関係が強化され、ペソ相場には追い風となっています。米国の影響を受けやすいというメリットとデメリットを意識しておくとよいでしょう。