1998年の金融ビッグバンに伴う外国為替取引の規制緩和により、それまで世界中の大手金融機関同士で行われていた外国為替取引が、個人投資家にも利用できるようになりました。個人投資家にとってわかりやすく便利なサービスを提供するFX会社も増え、資産運用の一環としてFX取引を利用する投資家も着実に増えています。これからFX取引を始めようと思っている方の中には、まだ「難しそう」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、ここではFXの仕組みや利益の出し方について、初心者の方にもわかるように解説していきます。
FXの意味と基本的な仕組み
FXの仕組みをよく理解しないまま取引を始めると、大切なお金をリスクにさらしてしまうことになります。
初めての方は、最初は分からないことだらけかもしれませんが、時間をかけてFXの仕組みを十分に理解することが必要です。
そもそもFXって何?
FXとは「Foreign Exchange」の略で、日本では外国為替証拠金取引とも呼ばれています。外貨を売買し、売買価格の差額で利益を得ることを目的とした、比較的新しい金融商品です。
基本的な仕組み
FXの取引は、2つの通貨の交換が基本です。例えば、「USD/JPY」を取引する場合、アメリカの通貨「USD」と日本の通貨「JPY」を交換することになります。この2つの通貨のペアを「通貨ペア」と呼びます。米ドル」と「円」の交換の場合、通貨ペアは「米ドル/円」となります。
FX取引は、需要と供給によって常に変動している為替レートを利用して利益を得る取引です。例えば、米ドル/円の場合、ドルを買いたい需要(=円を売りたい供給)が多ければ、ドル高円安になり、逆にドルを売りたい供給(=円を買いたい需要)が多ければ、ドル安円高になります。基本的には、為替レートが低いときに買って、高いときに売れば利益が得られます。
FXで利益を得る方法
FXで利益を得るには2つの方法があります。1つ目は、通貨ペアの買値と売値の差から差益を得る方法です。これはキャピタルゲインと呼ばれます。もう一つは、通貨ペアの国の金利差から得られるスワップポイントを得ることです。これをインカムゲインと呼びます。インカムゲインとは、株取引でいうところの配当金を受け取るようなものです。以上が基本ですが、それぞれの仕組みを理解し、どのように利益を得るかが重要です。
為替差益について
為替レートの変動を利用して利益を上げる方法について詳しく見ていきましょう。為替レートとは、通貨の値段のことです。前述したように、為替レートはリアルタイムで変動しており、価格が安いときに買い、高いときに売れば利益を得ることができます。
しかし、FX取引では、円高でも円安でも利益を狙うことができます。
株取引の経験がある方は、「株高でも株安でも利益を狙える」と言われると、「株安の時に買えば利益を得るチャンスがあるが、株高の時に買えば損をする可能性が高い」と思われるかもしれません。
FXでは、価格が高いときに買うのではなく、「売る」ことで利益を狙うことができます。一般的には「安く買って高く売る」ことで利益が生まれますが、FXの世界では「高い値段で売って安い値段で買い戻す」というように、「売り」から取引を始めることが可能です。例えば、米ドル/円の取引の場合、1ドル=100円で売って、1ドル=90円で買い戻せば、1ドルあたり10円の利益が出ます。仮に1万ドルで取引した場合、10万円(=10円×1万)の利益を得ることができます。
スワップポイント
次に、スワップポイントについて詳しく説明します。
スワップポイントとは、株式の配当金や預金金利と同様に、2つの通貨の金利差によって発生する利益のことです。スワップポイントは金利差調整額とも呼ばれ、一般的には日本円などの低金利の通貨を売り、トルコやメキシコ、南アフリカなどの高金利の国の通貨を買うことで獲得できます。
ポジション(保有通貨)を決済しない限り、取引口座にスワップポイントが継続的に貯まるため、スワップポイントを稼ぐために長期投資でFXを利用する投資家も少なくありません。
スワップポイントはFX会社によって異なるため、受け取れるスワップポイントが高いFX会社を選ぶことがFX口座開設時のポイントの1つです。
人気の高金利通貨はもちろん、「みんなのFX」は主要通貨のスワップポイントも高水準で、毎日コツコツとスワップを貯めることができます。
逆に、低金利国の通貨を買って高金利国の通貨を売った場合、金利差分のスワップポイントを支払うことになります。また、スワップポイントは日々変動します。
資金を効率的に儲ける仕組み
FXの最大の特徴は「レバレッジ」ではないでしょうか。
レバレッジとはテコの原理で、少額の資金で大きな取引ができることを意味します。
例えば、FX会社に証拠金として10万円を預けると、最大で1億円分の取引が可能になります。この高い資金効率を利用して、倍率を高くすればするほど、より多くのポジションを持つことができ、その結果、取引証拠金やスワップポイントを得ることができるのです。
FX リスクと損失拡大を防止する仕組み
レバレッジは高い資金効率を生かし、大きな利益を得ることができる反面、そのリスクにも注意しなければなりません。どのようなリスクが存在するのか、それをどのように防ぐのかを理解し、大切な資金を運用しましょう。
FXのリスク
FX取引には、主に4つのリスクがあります。リスクを知らずに取引するのではなく、リスクを知っておくことで、いざという時に慌てずに対処できるかもしれません。
(1)為替変動リスク
為替取引は、相場が予想通りに動けば利益が出る一方、予想に反して相場が動いた場合には為替差損が発生します。
(2) 金利変動リスク
取引通貨ペアの国別金利差が縮小した場合、スワップポイントの減少や市場価格の下落が生じることがあります。
(3) スリッページのリスク
相場急変時に、希望する価格と乖離したレートで約定するリスクがあります。これをスリッページといいます。流動性が比較的低い(取引量が少ない)新興国通貨では、スリッページが発生する可能性があります。
(4) レバレッジリスク
レバレッジは、投資家にとって資金効率が高く、大きな利益を得る可能性がある反面、レバレッジが高くなればなるほど、リスクも高くなります。
損が膨らまない仕組み
損失のリスクを気にするあまり、取引への一歩を踏み出せないでいると、いつまでたっても利益を出すことはできません。いざという時に冷静に対応できるよう、リスクをしっかり把握すると同時に、損失が拡大しないための仕組みを身につけることが大切です。
FXでは、お客様の資産を守るために、相場の急変動により証拠金を超える損失が発生した場合、取引を強制的に終了する「ロスカット」の仕組みがあります。これは、保有するポジションの損失が一定以上になると、強制的にポジションを自動決済する仕組みです。ロスカットのルールはFX会社によって異なりますが、証拠金維持率が50%を下回るとロスカットルールが実行されます。
例えば、FX口座に10万円を入金し、1ドル=100円の時に米ドル/円を100万ドル買い持ちしたとします。
この時に必要な証拠金は1万円(=100円×10万÷1000倍)です。
すると、証拠金維持率は1000%(=預け入れ金額(純資産)10万円÷必要証拠金1万円×100)です。強制ロスカットは証拠金維持率が50%になった時点で発生するので、この時点ではまだ950%の証拠金があることになります。
この後、含み損が増えると純資産が減少し、それに伴い証拠金維持率も低下していきます。
そして、証拠金維持率が50%を切るとロスカットが実行され、自動的にポジションが決済されます。
計算式は以下の通りです。
必要証拠金=取引価格×取引量÷レバレッジ
証拠金維持率(%)=純資産÷必要証拠金×100
(※この計算には、手数料、スワップポイント等は考慮されていません。)
FXの仕組みをしっかり理解してから取引を始めましょう
FX取引で利益と損失が発生する仕組み、リスクの種類、損失が拡大しない仕組みについてご理解いただけたかと思います。ここでの解説が、皆さんの資産形成のお役に立てれば幸いです。